これはびっくり!春画は最高級のおもてなし!?〜パワースポット・アソコ信仰の不思議〜

江戸時代、春画はポルノではなかった!アソコの持つパワーで吹き飛ばしたかったものとは?

春画における男女のアソコの表現の違い

近年、アートファンからの熱視線を注がれているのが「春画」です。 春画はセックスを描いた絵だと理解されていますが、それよりも絵の中心は男女の性器、つまりアソコを描くために春画は描かれたのではないか……と筆者には思われます。一般的に絵の中で重要なものは大きくハッキリ描かれるものですが、春画におけるアソコの大きさは、人物の顔の大きさとほぼ同じという事実もあります。

喜多川歌麿の春画春画 - 喜多川歌麿


春画に描かれる顔や髪型、さらにシチュエーションは時代や絵師の好みで激変します。 その一方で、とくに女性器の表現自体は江戸時代全期を通じて、ほとんど変わっていません。幕末に従うほどに性器表現は克明になっていった……ともいえますが、描かれたアソコは完全に左右対称であり、女性器特有の色んな要素がそれぞれ主張しすぎないようになっているのです。このコラムの連載の第一回でもお話しした「理想の(i)ライン」に合致しているともいえます。

このように女性器の描かれ方に変化がない一方、男性のアソコの表現には時代や、絵師による差があります。実物よりもかなり巨大であることはいうまでもありません。強いて言えば、「太め」に描かれることが多いようですが……この頃の絵師の99パーセントは男性ですから、男性としてのセクシャルな価値観が反映されているのかもしれませんね。

昔は、おおらかだった!?春画の立ち位置とは?

春画を見て、昔は性表現におおらかだったんだなぁ~というようなことを現代人は感じてしまいがちですが、江戸幕府から春画の類はすべて発売禁止の御法度な代物とされていました。ちなみに禁止の理由は表現のわいせつさだけではありません。春画は豪華な画材を使って描かれることが多く、これが幕府が庶民に求める質素倹約に反するから……とされたのです。

つまり当時の人々にとって春画というのは、現代のポルノに似ても非なるものでした。江戸時代に暮らす、庶民の感性では、性器はむしろ「おめでたいモノ」だったようです。春画は「笑い絵」とも呼ばれていました。春画は、もとは中国語の表現であり、日本語としては笑い絵というのが正しいのです。笑う門には福来たるなどと言いますが、まさにそのとおり。笑い絵=ハッピーを呼ぶ絵だったということです。

印刷されて発売された春画のケースによく見られるのですが、絵の回りを文字がうめつくしており、その「ト書き」と「セリフ」が、笑える内容なんですね。内容にムフッと来るということもあるでしょうが……。

また性器、とくに女性器に魔除けが期待されていた背景もムシできないと思います。そもそも笑い絵と呼ばれる一方で、春画は必ずしも笑いながら見るものではなかった……という事実がある外国人商人の証言から明らかなのです。 ビックリするほど、すごく真面目に見ることだってありました。

春画がおもてなしに使われていた!?

幕末に来日したアメリカ人商人フランシス・ホールという人物は、商談相手の日本人商人の家で、それも複数の家庭で、春画を「おもてなし」として見せられ、仰天するという経験をしています。彼らに春画を見せる態度には不謹慎さはまったくなく、日本人たちがまったく春画をイヤらしいモノとして感じていないことは明らかでした。 ホールはアソコを描いた絵=いやしむべきポルノ=客人の目に晒すものではありえない!という価値観しかないアメリカから来ているので、日本人の品性というものがわからなくなった、と証言しています。

恐らくホールが目にした春画は、おそらくは肉筆春画とよばれる、ことさらに豪華な素材で絵師が丁寧に描きこんだタイプのものだったと思われます。いくら逸品だったにせよ、それを外国人にもおもてなしとして使うことは、現代人にも少し理解しがたいところはあるかもしれません。それはわれわれ現代日本人がアソコへの信仰心を失ってしまったからでしょうね。

「八百万の神」信仰は、アソコにまで!?

それこそ秘法館にありがちな性器のカタチをした石をありがたがる感性と似ていますが、かつての日本では性器=アソコに対して、信仰心のようなものがあったようです。春画はもっとその手の文脈からも研究されるべきでしょうね。

金山神社境内の金床江戸時代からの性信仰が残る金山神社(かなまら様)の境内の金床


最初におはなしした、幕末になるほどに性器表現が濃密になっていった影には、世情の不安をアソコパワーで吹き飛ばそうと江戸時代の人々が考えていたから……なーんていえるかもしれませんよ。


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著者紹介 堀江宏樹さん

歴史エッセイスト・作家。1977年生まれ、大阪府出身。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。大学在学中からフリーランスライターとして文筆活動を開始。『仰天! 歴史のウラ雑学 後宮の世界』(竹書房)で作家デビュー。性別を超えた独特の論調で、幅広いファン層をもつ。2016年秋発売の『恐い世界史』(三笠書房)が現在ヒット中。好評近著に『乙女の真田丸』(主婦と生活社)、『三大遊郭』(幻冬舎)。最近の文庫化に『愛と夜の日史スキャンダル』『乙女の日本史 文学編』など。
プロフィール写真:(C)竹内摩耶

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