400年以上も前から人類は気づいていた!?バイブが女性の美容と健康にオススメだったわけとは?

なんと、19世紀にはすでに存在していたという家庭用「バイブ」。その使用目的とは一体!?

セックスレスで窒息死(?)の謎


ヨーロッパでは、欲求不満が続くと女性は窒息して死んでしまうと考えられていました。本来なら夫がその役割を果たすべきなのですが、大昔からセックスレス問題はあったのです。あるいは夫に先立たれてしまう場合も考えられました。

1546年、欲求不満をこじらせたことで「瀕死の状態になり、意識を失って横たわっていた」44歳の未亡人のケースについて、オランダ人医師ピーター・ファン・フォレーストが書いている記述は色んな意味で衝撃的です。

当時は……というか、古代ギリシャのガレヌスが主張して以来、ヨーロッパでは女性もセックスの際、「精液」を発射していると考えられていました。具体的にはバルトリン腺液のことだと思われます。
ところが性行為をしない(できない)ことが続くと、この「精液」が体内にどんどん溜まっていき、最終的には窒息して死ぬと本気で信じられていたのです。

この失神した女性は、軟膏を塗った手で女性器を、医師からマッサージされることで「やっと意識を取り戻した」……とのことです。この頃の医師って大変ですね。それ以前に欲求不満すぎて失神しなくてはならない女性も気の毒ですが。

19世紀の驚きの治療法とは?

19世紀になっても、欲求不満の女性が向かったのは病院でした。しかも精神病院でした。
治療っていっても、某デリケートゾーンに電気マッサージャーをあててもらうだけなんですけどね!


Salpetriere_Chapel現在のピティエ=サルペトリエール病院

電気製品が実用化された19世紀には震動治療と称し、フランスなどでバイブが一大ブームとなっていました。この手の「治療」で人気を呼んだのは、後に心理学者として有名になる、あのフロイト先生も研鑽を積んだ、フランスのラ・サルペトリエール病院などです。いったい何をしてるんだという話ですが、そもそもなぜ病院にまで行かなければいけないかというと、古代以来、子宮は手に終えない、凶暴な臓器だと考えられていたわけです。放置していると口から飛び出すとか本気で信じられており、それを専門家の手でなだめすかそうとしていたのです。何回も繰り返しますが、19世紀のヨーロッパのお話ですからね。

欲求不満との戦いは女性の場合、深刻化することが多々ありました。
麻酔手術が欧米圏でも一般化しつつあったのは19世紀後半ですが……それ以降、「ひとりあそび」が自力で止められない女性・少女たちは、もしくは自ら、もしくは親の意思で医院に送り込まれたりもしました。
そして女性器の一部を切除されてしまうという、ひとりあそび強制リセット手術を受けさせられることも稀ではなかったのです。その手術は20世紀になっても続けられていたのでした。コワイコワイ。

家庭で「治療」できる製品発売!

現在でも緊急コールに「小学校低学年の娘がずーっとアソコを触っています! 」という電話がかかってくることがあり、心底から困惑するとER勤務の知人から筆者は聞いたことがあります……たしかに親としては緊急の大問題なのでしょうが……。

このように女性の性を異様に神聖視、タブー視する風潮が強い一方、欲求不満なんか精神病院で解消しなくてもいいんですよ!という流れも19世紀末にいきなり一般化しています(それまでは異様にタブー視されていたのに……)。
家庭用の「治療器」が発売されたんですね。

最古のバイブレーターの広告は1899年、アメリカ・イギリス文化圏のもの。商品名が「Vibratile」。辞書的な意味では「震動性の」という形容詞ですね。用途としてはご想像のとおりです。
デザイン自体もハンドミキサー状で、別売り部品をつければ泡立て器としても使用できるお得アイテム。
ミシンや扇風機、湯沸かし器やトースターの広告にまじって(!)、堂々と売り出されていました。「神経痛、頭痛、そしてシワ予防」といった健康と美容効果があり、「お目の高い女性の方々をお手伝いします」と訴えた商品でした。


White Cross Electric Vibrator ad NYT 19131913年の広告


……これが現在、マスコミの一部でいまだに信奉されている「セックスでキレイになろう!」なんて発想の源流かもしれないと思うと、隔世の感がございます。

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著者紹介 堀江宏樹さん

歴史エッセイスト・作家。1977年生まれ、大阪府出身。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。大学在学中からフリーランスライターとして文筆活動を開始。『仰天! 歴史のウラ雑学 後宮の世界』(竹書房)で作家デビュー。性別を超えた独特の論調で、幅広いファン層をもつ。2016年秋発売の『恐い世界史』(三笠書房)が現在ヒット中。好評近著に『乙女の真田丸』(主婦と生活社)、『三大遊郭』(幻冬舎)。最近の文庫化に『愛と夜の日史スキャンダル』『乙女の日本史 文学編』など。
プロフィール写真:(C)竹内摩耶

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