アソコは本当にエロなの?国や時代や文化で変化する「わいせつ」の定義がおもしろい!

昔の中国では、カラダのある部位がアソコよりもわいせつとされていた!「わいせつ」の定義ってそもそも何なの??

性器表現はすべてわいせつ!?

2016年春、自分の性器をテーマに表現活動を展開する、某アーティストの女性に有罪判決がくだりました。現代日本では性器を表現すること自体が、「わいせつは罪」という論理で御法度なのです。

そもそも「わいせつ」とは何かというテーマ自体が非常にデリケートゾーンのまま放置されており、それが問題にも感じるのですが……「性器を表現すること」がそのまま「わいせつ」なのだと、現代日本でも言ってしまってよいものかという疑問はのこります。

そしてその判断基準は江戸幕府とほぼ同じまま、なんですねぇ。なんだか時代遅れの感もいなめません。

エロを感じるパーツは時代によって違う!

そもそも隠している「べき」だとされるのは、それが身体の中でもとくにエロティックな部分だとされているからでしょう。現代では性器や、(とくに女性の)乳首などがそれに相当するようですが……江戸時代の日本では、すくなくとも乳首は(男女ともに)肌色で塗られているだけで、克明に表現された性器にくらべ、非常にそっけない扱いを受けている印象があります。

(現代になればなるほど、日本人がエロを感じる身体のパーツはどんどん増加していっているといえるかもしれません。 逆に言えば、現代日本人は江戸人よりも、エロくなった、ということですね)


そもそもかつての日本人女性はキモノの下に(生理の時をのぞいて)下着をつけませんでした。性器は「ま、見えても仕方ない部分かな」だったということでしょうか。 性器自体にエロスがあるというより、シチュエーションの中ではじめてエロスは生まれていくのだという真実に、江戸時代の人々は気付いていたようです。ある意味、現代日本以上だといえますね。現在では性器表現は一律でわいせつということになりますから。

春画における性器の表現

さて「春画」はもとは中国語であり、かつては中国でも大量に春画は作られていました(現代ではポルノなどの制作は厳禁)。性器の表現は中国の春画では基本的に日本よりも控え目です。そもそも風景や室内背景がメインでそこで男女が絡み合っているというイメージですね。


中国の春画「春宮画」 中国の春画「春宮画」(16世紀)

日本同様、やや大きめに表現された性器もあらわなカップルの姿が描かれるわけですが、江戸時代の日本に相当する明代・清代の中国の春画の多くでは男女の乳首は、性器と同じ色調で表現されています。ここから考えると、当時は日本より、中国人がエロを感じる身体のパーツは多かったといえるかもしれないわけです。

中国で最もエロティクな部位は○○

中でも最大のエッチな身体の部分は女性の足でした。纏足された女性の足先が靴を脱がされ、剥き出しになった姿を描いたものは一枚もないそうです(『図説 纏足の歴史』)。 春画ですら絶対に隠されているモノ=最高にエロい部分だったと考えられます。

明代・清代の中国でもおもに漢民族の女性に、成人後も足のサイズを9㎝ほどに留め置く纏足がさかんに行われていました(ちなみに確認可能な纏足の実施は宋代くらいから)。どうやらこの纏足、女性にとっては(女性器以上に)エクスタシーを感じることができる部分になっていたらしく、それゆえ夫婦生活を円満にするため重視されていたようなのです。


纏足した足(左足は纏足用の靴を着用) 纏足した足(左足は纏足用の靴を着用)


このため、靴を脱いでしまった裸の足を、夫以外の男性に見られることは最大の恥だとされてもいました。つまり、むきだしの纏足より、性器はエロティックな部分とは見なされていなかった……ということです。現代では纏足された裸足の写真をわれわれはインターネットなどで見ることが出来ますが、実際のところ、本当にエロティックかどうかは首をひねる代物です。実物がどうこうより、文化によってエロスとは何かが定義され、意味づけられ、その結果、本当に人を興奮させてしまうのですから、面白いものですね。

国や時代、文化で異なるエロの認識

現在では(世界の大部分で)もっともエロティックな部分のように決めつけられている性器。しかし、国や時代、文化を変えれば、必ずしもそうではなかった……といえると思います。文字化された史料以上に、アートそのものがタイムカプセルとして時代の空気を伝えてくれることはよくありますが、春画もその好例だと思います。


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著者紹介 堀江宏樹さん

歴史エッセイスト・作家。1977年生まれ、大阪府出身。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。大学在学中からフリーランスライターとして文筆活動を開始。『仰天! 歴史のウラ雑学 後宮の世界』(竹書房)で作家デビュー。性別を超えた独特の論調で、幅広いファン層をもつ。2016年秋発売の『恐い世界史』(三笠書房)が現在ヒット中。好評近著に『乙女の真田丸』(主婦と生活社)、『三大遊郭』(幻冬舎)。最近の文庫化に『愛と夜の日史スキャンダル』『乙女の日本史 文学編』など。
プロフィール写真:(C)竹内摩耶

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