命がけでもアソコはキレイに!理想の「i」ラインを求めて

アソコの縮小手術は、貞淑であることのシンボルだった!?

 太古の昔から「美」を目的とした、女性器の整形手術は世界中で行われてきたようです。性器の一部を切り取ってしまったり、凄い場合は縫合してしまったりする「女子割礼」とよばれる手術です。

現代とはことなり最新設備もなければ、痛みを止める麻酔もなく、さらには術後の感染症を予防する抗生物質の類もない中で、アソコが切り刻まれてきた……と知るとおもわず身震いをせずにはいられません!

貞淑であることのシンボル!?

そこまでして、何故?という疑問に対し、文化人類学的には「男性が自分の優位を示すために、女性に女性器の見た目を強制的に変えるようにさせた」という回答がされています。

こう書くと、眉をひそめざるをえないテーマのように思えますが、その伝統も時間の経過と共に、大きな変化を遂げているようです。

つまり男性はそこまで希望してないのに、女性の中で自分のアソコを苦しい思いをしてまで改造することによって、「手術」が「よりよい結婚ができるための絶対条件」だという風にすり替えが起きてしまっているのです。

しかも現代でも、女性たちがこぞって手術を熱望しているという、他地域の者からすればビックリな状況になっているようです。女性器の手術=女子割礼は、女性が男性に対して貞淑であることのシンボルですから、他の女性がやってるのに自分だけやってないのは、自分がアバズレであると言っているのと等しくなってしまうのです。お互いのアソコの形を巡って、激しいマウンティングバトルが起きているのですね……。

考えるほどに頭痛がするテーマではありますが、自分(たち)のアソコの形、見た目に男性以上に女性たちが熱心であることの証明にもなりますので、今回は太古からの女性器整形手術=女子割礼の歴史にせまってみたいと思います。

昔からあったアソコの縮小手術

現在、アソコの美容外科手術の世界の主流というかトレンドは、小陰唇縮小ではありますが、理想の「i」ラインを作るには苦痛を避けるため、麻酔を行った上で、熟練の外科医のメスやレーザーによって手術が行われるものです。

ですから小陰唇の縮小手術といえば、現代技術の結晶のように思われるかもしれませんが、そんな優秀な技術など存在しない、はるか昔から、アフリカのスーダンやケニアに暮らす女性は(意外かも知れませんが)「アソコの縮小手術」を熱望し、今でも実際に昔ながらの方法で手術されてしまっています。国連報告によるとアフリカ28カ国、その他地域でも例があるのですが、とくに大々的な女性器手術が行われているスーダンやケニアの例を今回はとりあげます。

アフリカ


アフリカの女子割礼

当地で現代でも行われているのは、人類学的にいう女子割礼……少女のクリトリスや小陰唇などを切り取ってしまう、恐ろしげな手術です。ある程度成長してから、という地域・場合もありましたが、封建時代の中国の纏足のように親が幼い娘に無理矢理、ということも多々ありました……。 

酷い場合は縮小どころか、「陰部封鎖」とすら呼ばれているのですが……その名のとおりの手術方法はショッキングの一語です。たとえば初潮を迎えた十代の、つまり結婚時期が迫ってきた女性たちが手術の対象なんですが、麻酔などは一切つかわれない環境下で、ガラスの破片やカミソリの歯で小陰唇・大陰唇の切除が最初に行われます。要するに「i」ラインのために全部ムダな要素は取ってしまうんですね。 

最終的には排尿と生理時用のわずかな隙間をのこして縫合が、なんとアカシアの棘を使って行われてしまうんですねぇ。恐ろしい激痛が想像されます。その後の治療は包帯でグルグル巻にされ、40日間放置されるだけ。死んでしまう女性もいました。

恐ろしい手術の起源は?

この手術がアフリカの一部で根付いたのは、イスラム教の影響ともいわれますが、アラビア半島のイスラム教徒の女性は伝統的に陰部の剃毛は行いますが、縮小手術は行いません。 

クリトリスの一部の切除から、陰部封鎖にいたるまでレベルの差はあるにせよ、女子割礼手術は「ファラオの割礼」と呼ばれることがあります。それは古代エジプトのクレオパトラなどやっていた……という説があるから、なんですが、どうやらこれは偽りですね。彼女たちのミイラからは具体的な証拠が見つかったわけではありません。

 ただし女性奴隷の場合、陰部封鎖が行われていたことは事実のようです。女性奴隷が妊娠期間中、バリバリと働けなくなるのをふせぐために「女性器を銅製のピンやブローチで留めていた」「そうでない女性奴隷の売値は低かった」など、古代ローマの医師ケルススの『医学論』に記述があるからです。

目的は、男のエゴ?女のプライド?

話を現代のスーダンやケニアに戻しますと、この手術から回復しても、後年に感染症をこじらせ、死んでしまう女性も多々いました。しかし当地で陰部の手術を受けなくてすむ女性は、娼婦やその娘くらいなのだそうです(当地では差別を受ける存在)。 

陰部封鎖手術の結果、たしかに見た目は「i」ラインにちかづきますが……実際に女性が初夜を迎えるにあたって、花婿さんにあたる男性が、古傷と化した封鎖部分の縫合を引き裂いて破るのだそうです(時には数ヶ月以上もの時間をかけて)。もちろん激痛で花嫁は絶叫するのですけれど、それでも止めないのが男に必要とされる勇気とかなんとか……。ヒー。

現代も続く伝統の是非

欧米人がアフリカにやってくるようになって、この伝統は「人道的でない」との理由で廃止されかけます。しかし、初代のケニア大統領ジョモ・ケニヤッタは1939年『マウント・ケニアを直視して』と題した論文を発表し、女子割礼についても「これがウチの伝統なんだから、ヨソ者は口を出すな」と主張。伝統は復活しました(部族の伝統やアイデンティティにかかわる……といわれても、やはり大問題な気が……)。

現在にいたるまで、政権ごとに女子割礼は禁止・復活を繰り返し、結局は本人の意思に任せるという風潮となりつつありますが、いっこうに終わる気配がありません。なぜなら最初にお話したように、女子割礼の苦しみ=女性として幸せを得るための投資なのだという意識が女性から抜けないからです。

実際に女子割礼を受けていない=アバズレという視線を浴びたくないという女のプライドがそうさせてしまうわけなんですが、男性も男性で、女性があまりに熱心だと、「女のことは、女にまかせておこう」と放置してしまっているわけです。問題は本当に根深いのでした(以上、イェルト・ドレント『ヴァギナの文化史』内のレポートを参照)。

理想の「i」ラインを求めて

かつて陰部封鎖を受ける場合、性器の縫合は一度だけでしたが、現在は結婚、妊娠、初産という一連の流れが済んだあと、なぜかアソコを何度でも縫合したがる女性が増え、書いているだけでもアタマが痛くなってくるような状態になっているそうです。 

しかもそれは(これまた)男性側からの要求というより、「ずーっと結婚前みたいに、魅力的な外見のアソコを持っていたい」という女性サイドからの熱望の結果なのだとか。理想の「i」ラインを求めての歴史は、文字通り、血と涙の結晶なんでしょうね……。アソコというもっともプライヴェートな身体の部分を自分の意思でメンテナンスできる現代の日本人は幸せ、ということでしょうかね……。


本サイトで提供する情報は、公知の一般情報に基づき構成されたものであり、医学的アドバイスや傷病の治癒等の情報提供を目的としたものではありません。 合法性や道徳性、正確性、著作権の許諾について細心の注意を払って掲載していますが、閲覧並びに情報収集は利用者ご自身の責任において行っていただくものとし、当社はいかなる責任も負いません。

本サイトに掲載している記事・コラム・写真・イラスト・動画などの著作物は、著作権の保護を受けています。
著作権者の許諾なく著作物を利用することが法的に認められる場合を除き、無断で複製、公衆送信、翻案、配布等の利用をすることはできません。また、利用が認められる場合でも、著作者の意に反した変更、削除はできません。記事を要約して利用することも、原則として著作権者の許諾が必要です。 著作権規定


著者紹介 堀江宏樹さん

歴史エッセイスト・作家。1977年生まれ、大阪府出身。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。大学在学中からフリーランスライターとして文筆活動を開始。『仰天! 歴史のウラ雑学 後宮の世界』(竹書房)で作家デビュー。性別を超えた独特の論調で、幅広いファン層をもつ。2016年秋発売の『恐い世界史』(三笠書房)が現在ヒット中。好評近著に『乙女の真田丸』(主婦と生活社)、『三大遊郭』(幻冬舎)。最近の文庫化に『愛と夜の日史スキャンダル』『乙女の日本史 文学編』など。
プロフィール写真:(C)竹内摩耶

執筆コラム一覧