【退魔】アソコパワーで悪霊退散……アジア史に見るとんでもアソコ逸話

無敵のモテ女子「和泉式部」は、貴船神社の巫女直伝のアソコ絡みの呪術「敬愛の祭」で難を逃れた?(『沙石集』より)

    我らがアジア文化圏のアソコ文化といえば、おもわず秘宝館を想像してしまうのは筆者だけではないでしょう。温泉街や高速道路ぞいに点在する秘宝館名物といえばアソコ岩ですが、おもえば、世界中の古代社会で、アソコをかたどったアートや日常道具、宗教的なモニュメントは作られてきました。

    【前話(第二話)】もはや女性にとって第二の顔!?理想の「i」ラインを求めて

日本のアソコ文化はお風呂が要因!?

それでは我らが日本のアソコ文化は……というと、少なくともアンダーヘアは生えっぱなしなのが普通だったようです。外国では水をめぐって殺し合いが起きる文化もある一方、日本は水が豊かにあるのが普通ですから、生えていたところで衛生的な問題はないのでしょう。
……と聞いて、平安時代には風呂に入らなかったんでは?と思うかもしれませんが、当時日本で「風呂」といえば蒸し風呂、つまりサウナのことなんですね。
サウナに入るのが月に何度かしかなかった……というだけのことです。行水などを習慣的にして、肌を衛生的に保っているのが普通でした。

水が豊かな日本

(逆にヨーロッパでは風呂に入らなくなるんですねぇ。古代~中世初期のヨーロッパには庶民向けの風呂屋もあり、入浴は頻繁でした。しかし中世後期にペストなどが流行るようになると、お風呂に入ると肌が柔らかくなって、その肌から病気の素が入り込んでくるという迷信が広まり、入浴自体が社会全体で避けられるという事情がありました)

お隣中国の逸話

さて、余談が長くなりましたが、アンダーヘアは生えっぱなしというのは、日本だけでなく、アジア圏には同じことが言えますね。一説に唐の楊貴妃のアンダーヘアは非常に長く、足とか膝に達するほどだった。前掛け(エプロン)みたいになっていた……とか言います。そもそもこの逸話のどこに、魅力を感じたらいいのか、現代人としては不明ですが。

一方で、普通に成人女性なのに、何にも毛が生えていないアソコが上物扱いされる(=性的に感度がよい)という現象も中国にはありました。なんでも大陸は極端な気がしますが、大陸のアソコ研究は年季が入っているのです。ヨーロッパでクリトリスが「医学的に発見された」のは17世紀ですが、中国では紀元前2世紀のものとされる医学書に女性器の各部の研究が含まれていたりしますから……(具体的には馬王堆漢墓から出土した『養生方』など)。

日本の逸話その1 清少納言

さて前回、欧米文化圏でアソコに秘められた悪魔払いのパワーをご紹介しましたが、「ブツを見せることで敵を追い払える」という、アソコ信仰は日本にもありえたようですよ。たとえば日本でもその手の例はチラホラ出てきます。

平安時代中期、宮中を引退した清少納言はシケた実家暮らしをふたたび始めていました。ところが実の兄が逆恨みから暴漢に攻めこまれるという大事件が起きます。兄だけでなく、自分までが殺されそうになるという瞬間、清少納言は何を思ったか、着物のスソをまくり、アソコを見せて難を逃れた……なんて逸話があるんですね(『古事談』)。
平安の「キラキラ女子」として、美的な日常を『枕草子』に描いていたころとはうってかわり、尼になってからあまりに身なりを構わなかったので、中年の「僧兵」と間違えられたからというのが『古事談』の主張ですが……。

平安時代イメージ

日本の逸話その2 和泉式部

清少納言とほぼ同時代に生きた、無敵の「モテ女子」こと和泉式部にもアソコパワーの信仰者という側面がありました。倦怠期に陥った夫婦関係を、貴船神社の高齢の巫女におそわった「敬愛の祭」と呼ばれるアソコがらみの呪術で乗り切ったというのです(『沙石集』)。

具体的にはアソコを剥き出しにして、木魚みたいに叩いて、三度くるっと回るとか。

最初はじらっていた和泉式部は、その呪術のいったい何が敬愛か、と。「わが身(アソコ)を大切に思うがゆえ、わが身を捨てさるような行いはできません!」などとお得意の歌を詠み、そのはじらいっぷりを影で夫が見ていたことがきっかけとなって見事に復活愛を勝ち得たのだ(女は恥じらいが大事!)……と『沙石集』は説きます。

夜の貴船神社

まあ、ね。実際は捨てた妻のあとを付けていくなんて酔狂なことを平安時代の男はしませんし、和泉式部はとにかく前のめりな生き方の女ですから、くるっとまわってポンポン叩いていたような気もしますけど。

もともと若い時から身分違いの皇子さまとの不倫を敢行するなど、タフな女だった和泉式部。ホントにホントにタフな女だったのでしょうが、そこまでタフな女でも最後の最後に信頼したいのは自分の女性自身だったというのは興味深いことです。

『堀江宏樹のアソコ世界史観』過去記事一覧



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著者紹介 堀江宏樹さん

歴史エッセイスト・作家。1977年生まれ、大阪府出身。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。大学在学中からフリーランスライターとして文筆活動を開始。『仰天! 歴史のウラ雑学 後宮の世界』(竹書房)で作家デビュー。性別を超えた独特の論調で、幅広いファン層をもつ。2016年秋発売の『恐い世界史』(三笠書房)が現在ヒット中。好評近著に『乙女の真田丸』(主婦と生活社)、『三大遊郭』(幻冬舎)。最近の文庫化に『愛と夜の日史スキャンダル』『乙女の日本史 文学編』など。
プロフィール写真:(C)竹内摩耶

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